マンションの敷地内には、シンボルツリーや生垣、低木など、さまざまな植栽が設けられています。
植栽はマンションの景観を向上させるだけでなく、居住環境を快適にする役割も担っています。
一方で、植栽管理には毎年一定の費用が発生しており、樹木の成長に伴って管理費用が増加したり、居住者とのトラブルにつながったりするケースもあります。
また、植栽管理については、管理会社の管理委託契約に含める方法と、管理組合が専門業者に直接発注する方法があり、契約方法によって費用や管理組合の負担が異なります。
今回は、マンション管理組合が知っておきたい植栽管理の基本と、管理費の適正化、委託方法の違い、トラブル防止のポイントについて解説します。
1.マンションの植栽管理にはどのような作業がある?
マンションの植栽管理には、主に次のような作業があります。
- 剪定作業:樹木の枝葉を切り、樹形を整える作業
- 刈込作業:生垣や低木の形を整える作業
- 除草作業:植栽地などに生えた雑草を除去する作業
- 施肥作業:樹木の生育に必要な肥料を与える作業
- 病害虫防除:樹木の病気や害虫の発生を予防・抑制する作業
- 樹木の点検:枯れ枝や腐朽、倒木などの危険性を確認する作業
これらの作業は、植栽の種類や規模に応じて、年間の管理計画に基づいて実施することが一般的です。
ただし、すべての作業が毎年必要になるとは限りません。樹種や生育状況に応じて作業時期や頻度を検討することが重要です。
2.植栽管理費用は適正ですか?
植栽管理に関する費用は、マンションの規模や植栽の量、樹木の高さ、作業回数などによって大きく異なります。
管理組合によっては、毎年同じ業者に同じ内容で作業を依頼し、費用や作業内容を長期間見直していないケースもあるでしょう。
しかし、植栽管理費用についても、定期的に契約内容を確認することが大切です。
例えば、次のような点が確認事項として挙げられます。
- 剪定や刈込の回数は適切か
- 作業対象となる樹木や植栽範囲が明確になっているか
- 実際の作業内容が契約書や仕様書と一致しているか
- 不要な作業が含まれていないか
- 作業費用が現在の市場価格と大きく乖離していないか
特に重要なのは、費用の金額だけではなく、作業内容と費用のバランスを確認することです。
費用削減を優先して剪定回数を減らした結果、枝葉が過度に成長し、後から大掛かりな剪定が必要になる可能性もあります。
また、樹種によって適切な剪定時期や方法が異なるため、専門業者の意見を踏まえた検討が必要です。
3.植栽管理は管理会社に委託するべき?それとも直接契約?
植栽管理の契約方法は、管理組合にとって検討する価値のある事項です。
マンションの植栽管理には、大きく分けて次の2つの方法があります。
- ① 管理会社の管理委託契約に植栽管理業務を含める方法
- ② 管理組合が植栽管理業者と直接契約する方法
なお、管理会社の管理委託契約に植栽管理業務を含めることは必須ではありません。国土交通省のマンション標準管理委託契約書においても、植栽管理業務は個々のマンションの状況や必要性に応じて追加する業務として例示されています。
それぞれの方法にはメリットとデメリットがあるため、管理組合の状況に応じた選択が重要です。
① 管理会社の管理委託契約に含める場合
管理会社の管理委託契約に植栽管理を含める場合、管理会社が専門業者に再委託する方法が一般的です。
この場合、管理組合は管理会社を通じて植栽管理を行うことになります。
【メリット】
- 管理会社が植栽管理業者の手配や作業日程の調整を行う
- 作業の実施状況や不具合について、管理会社を窓口として対応できる
- 管理組合が専門業者と直接やり取りする負担を軽減できる
- 植栽管理に関する居住者からの相談や苦情を管理会社に集約しやすい
【デメリット】
- 管理会社の業務管理費用などが含まれ、直接契約より費用が高くなる場合がある
- 実際の植栽管理業者の作業費用が分かりにくい場合がある
- 管理会社が選定した業者を継続して使用し、費用や作業内容が十分に比較されない場合がある
管理会社に委託する最大のメリットは、管理組合の事務負担を軽減できる点です。
一方、管理会社への委託が必ずしも費用面で有利とは限らないため、定期的に契約内容や金額を確認することが望ましいでしょう。
② 管理組合が植栽管理業者と直接契約する場合
もう一つの方法が、管理組合が造園会社などの専門業者と直接契約する方法です。
この場合、管理組合が発注者となり、植栽管理業者に作業を依頼します。
【メリット】
- 管理会社を介さないため、費用を削減できる可能性がある
- 複数の植栽管理業者から見積もりを取得し、比較検討しやすい
- 植栽の状態や管理方針について、専門業者から直接提案を受けられる
- 作業内容や仕様の変更について、専門業者と直接協議できる
【デメリット】
- 業者の選定や契約手続きなどを管理組合が行う必要がある
- 作業日程の調整や作業完了後の確認など、管理組合の負担が増える場合がある
- 作業に不備があった場合、管理組合が業者と直接交渉する必要がある
- 理事会の役員が交代した際、契約内容や管理状況の引継ぎが課題になる場合がある
直接契約は、費用の透明性を確保しやすい点が特徴です。
ただし、管理会社を介さないことで費用が安くなったとしても、その分、管理組合の事務負担が増える可能性があることには注意が必要です。
③ 直接契約でも管理会社に一定の協力を求める方法
植栽管理業者と直接契約する場合でも、管理会社に一切関与してもらえなくなるとは限りません。
例えば、管理組合が植栽管理業者と直接契約しながら、作業日程の居住者への周知や、作業時の立会い、作業報告書の受領などについて、管理会社に協力を求める方法も考えられます。
ただし、これらの業務が管理会社の管理委託契約に含まれていなければ、管理会社が対応する義務はありません。
そのため、直接契約に変更する場合は、管理会社に依頼する業務の範囲を事前に協議し、必要に応じて管理委託契約の内容を変更することが重要です。
また、管理会社に追加の管理業務を依頼する場合、別途費用が発生する可能性もあります。
直接契約と管理会社の協力を組み合わせることで、費用削減と管理組合の負担軽減を両立できる場合があります。
④ 契約方法を変更する場合の注意点
現在、管理会社の管理委託契約に植栽管理業務が含まれているマンションで、専門業者との直接契約に変更する場合は、いくつかの確認事項があります。
まず、管理会社との契約から植栽管理業務を除外した場合、管理委託費がいくら減額されるのかを確認する必要があります。
仮に、管理会社を通じた植栽管理費用が年間100万円であり、直接契約する専門業者の見積金額が年間80万円だったとしても、必ずしも20万円の削減になるとは限りません。
管理会社の契約金額が十分に減額されない場合や、直接契約に伴って追加の管理業務費用が発生する場合もあるためです。
したがって、現在の管理委託費の減額幅と、直接契約に変更した場合の総費用を比較することが重要です。
また、契約変更に際しては、管理規約や予算の内容などに応じて、理事会または総会で必要な承認手続きを確認する必要があります。
植栽管理業者の契約先を変更するだけでなく、管理会社との管理委託契約の変更も必要になる場合があるため、契約更新時期などを考慮して検討するとよいでしょう。
4.樹木の成長による居住者トラブルに注意
植栽管理では、樹木の成長に伴う居住者からの苦情にも注意が必要です。
例えば、次のような問題が考えられます。
- 枝葉が成長し、住戸の日当たりが悪くなる
- 樹木が窓やバルコニーに接触する
- 落ち葉がバルコニーや専用庭に大量に入り込む
- 樹木によって防犯カメラや照明の機能が妨げられる
- 根の成長によって舗装面が持ち上がる
- 枝が敷地外に越境し、近隣住民とのトラブルにつながる
これらの問題は、日常的な管理を適切に行うことで予防できる場合があります。
一方、居住者から苦情が寄せられたからといって、直ちに樹木を伐採することが適切とは限りません。
植栽はマンション全体の景観にも関係するため、特定の居住者の要望だけでなく、管理組合全体の利益を踏まえて判断することが大切です。
5.樹木の伐採は慎重に判断する必要がある
植栽管理の見直しでは、管理費の削減を目的として樹木の伐採が検討される場合もあります。
例えば、成長した高木の剪定費用が負担になっている場合、樹木を伐採することで、将来的な維持管理費用を削減できる可能性があります。
しかし、樹木の伐採には次のような注意点があります。
- マンションの景観が大きく変わる可能性がある
- 日差しや周囲からの視線に対する遮蔽効果が失われる場合がある
- 伐採費用や抜根費用が発生する
- 居住者間で意見が分かれる可能性がある
- 緑化に関する条例や開発時の許可条件などの確認が必要になる場合がある
また、樹木の伐採については、管理規約や工事内容などによって、理事会決議で対応できる場合と、総会決議が必要になる場合があります。
国土交通省のマンション標準管理規約のコメントでも、植栽による日照障害などに関する重要な伐採については、総会決議によって決定することが望ましいとされています。
したがって、大規模な伐採を検討する場合は、事前に管理規約や関係法令を確認し、必要に応じて総会で区分所有者の意見を確認することが重要です。
6.植栽管理は短期的な費用削減だけで考えない
マンション管理組合では、管理費の上昇などを背景として、さまざまな維持管理費用の見直しが求められています。
植栽管理費用についても例外ではありません。
しかし、単純に作業回数を減らしたり、費用の安い業者に変更したりするだけでは、必ずしも適切な管理につながるとは限りません。
例えば、適切な剪定が行われなかったことで樹木が過度に成長し、高所作業車を使用した剪定や大規模な枝下ろしが必要になることも考えられます。
また、樹木の状態を適切に把握していなかった場合、倒木や枝の落下などの事故につながるおそれもあります。
そのため、植栽管理については、年間の作業費用だけではなく、中長期的な維持管理の観点から検討することが重要です。
樹木の成長状況や植栽の配置を確認したうえで、必要に応じて剪定方法の変更、樹種の変更、植栽の更新などを検討することも有効でしょう。
7.まとめ
マンションの植栽は、建物の外観や居住環境に影響する重要な共用財産の一つです。
一方で、適切な管理が行われていなければ、管理費用の増加や居住者トラブル、事故などにつながる可能性があります。
管理組合としては、現在の植栽管理の内容や費用が適切かどうかを定期的に確認し、必要に応じて見直しを行うことが大切です。
特に、植栽管理を管理会社の管理委託契約に含めるか、専門業者と直接契約するかについては、それぞれにメリットとデメリットがあります。
管理会社に委託することで事務負担を軽減できる一方、専門業者との直接契約によって費用を削減できる可能性もあります。
ただし、費用だけで判断するのではなく、管理組合の運営体制や管理会社との役割分担なども考慮する必要があります。
植栽管理についても、管理費の適正化と良好な住環境の維持を両立させることが重要といえるでしょう。
以上です。更に詳しい情報が知りたい方はエースマンション管理士事務所へお気軽にご相談ください。

