2026年9月28日、公正取引委員会は、関東地区のマンション管理組合が発注した大規模修繕工事をめぐり、設計コンサルタント会社2社と施工会社40社、合計42社について独占禁止法違反を認定し、排除措置命令および課徴金納付命令を行ったことを公表しました。

これまでもマンション大規模修繕工事をめぐる談合問題については、公正取引委員会による立入検査などが報じられてきましたが、今回、実際に独占禁止法違反が認定され、行政処分が行われたことで、大きな節目を迎えたことになります。

42社の独占禁止法違反を認定

公正取引委員会の発表によると、対象となったのは、関東地区のマンション管理組合が設計コンサルタント会社に業務を委託したうえで発注した大規模修繕工事です。

公正取引委員会は、設計コンサルタント会社2社と施工会社40社の計42社について、独占禁止法が禁止する「不当な取引制限」に該当する行為があったと認定しました。

このうち38社に対して排除措置命令が行われ、施工会社37社に対する課徴金納付命令の総額は16億3,788万円となっています。

マンションの大規模修繕工事をめぐって、公正取引委員会が行政処分を行うのは今回が初めてと報じられています。

談合の対象となったマンションは171件

今回の談合の対象となった大規模修繕工事は、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、茨城県、栃木県、群馬県の1都6県に所在するマンションで、合計171件に上ります。

報道によれば、対象となった工事は2022年2月から2025年2月までに契約されたもので、発注額は合計約310億円とされています。

また、今回、公正取引委員会は談合の対象となったマンションについても一覧を公表しています。

自身のマンションが今回の対象になっているのではないかと心配される管理組合や区分所有者の方は、公正取引委員会が公表している資料を確認することをおすすめします。

どのような方法で受注調整が行われていたのか

今回の発表で特に重要なのは、単に施工会社同士で工事金額を調整していたというだけではなく、管理組合から施工会社選定の補助などを委託されていた設計コンサルタント会社が受注調整に関与していたと認定された点です。

公正取引委員会によると、対象となる工事ごとに、あらかじめ受注予定者となる施工会社を決定し、それ以外の施工会社が受注予定者に協力する仕組みが取られていました。

具体的には、受注予定者が他社の見積価格などを調整し、他の施工会社がその指示された金額で見積書を提出する、あるいは見積り合わせに参加しないといった方法が取られていたとされています。

さらに設計コンサルタント会社は、設計コンサル業務の中で把握した管理組合の「設計予算」、つまり工事の発注予定金額などの情報を受注予定者側に提供していたと認定されています。

施工会社から設計コンサルタント会社への「手数料」も確認

今回の公正取引委員会の発表でもう一つ注目すべき点が、施工会社から設計コンサルタント会社への金銭の支払いです。

公正取引委員会は審査の過程で、設計コンサルタント会社から工事の発注に関する情報を提供された施工会社がその工事を受注した場合、工事請負契約金額の一定割合に相当する金銭を「手数料等」として設計コンサルタント会社に支払っていた事実を確認したとしています。

公正取引委員会は、このような手数料の支払いについて、提供される情報の内容などによっては、施工会社間の自由な競争をゆがめるおそれがあると指摘しています。

一部報道では、工事請負金額の5%程度を目安として設計コンサルタント会社へ支払うケースがあったとも報じられています。

なぜ管理組合にとって重大な問題なのか

マンションの大規模修繕工事では、数千万円から、規模によっては数億円という非常に大きな金額が動きます。

その原資となるのは、基本的には区分所有者が毎月積み立てている修繕積立金です。

管理組合が複数の施工会社から見積りを取得して競争させているつもりでも、実際にはあらかじめ受注会社が決められ、他社の見積金額まで調整されていたのであれば、本来期待されていた価格競争が行われていなかった可能性があります。

また、設計監理方式では、設計コンサルタントは専門知識を持つ立場として、管理組合を支援し、公正な施工会社選定を補助することが期待されています。

その設計コンサルタントが特定の施工会社と受注について協力関係を構築し、さらに施工会社から金銭を受け取っていたという今回の認定内容は、マンション管理組合にとって非常に重大な問題といえるでしょう。

管理組合は今後どのような点に注意すべきか

今回の問題を受け、今後、大規模修繕工事を予定している管理組合では、施工会社だけでなく、設計コンサルタントの選定方法についても改めて検討する必要があります。

  • 設計コンサルタントと施工会社との間に資本関係や継続的な取引関係がないか
  • 施工会社から設計コンサルタントに紹介料や手数料などが支払われる仕組みがないか
  • 施工会社の募集条件が特定の会社だけに有利な内容になっていないか
  • 見積参加会社が設計コンサルタントの紹介先だけに偏っていないか
  • 施工会社から提出された見積金額に不自然な価格差や規則性がないか
  • 設計コンサルタントだけに施工会社選定を任せず、管理組合側でも選定過程を確認しているか

設計コンサルタントを利用すること自体に問題があるわけではありません。

重要なのは、管理組合が設計コンサルタントにすべてを任せきりにするのではなく、施工会社募集から見積比較、ヒアリング、施工会社決定までの過程について透明性を確保することです。

すでに大規模修繕工事を実施したマンションはどうすればよいか

今回、公正取引委員会は、談合の対象となった大規模修繕工事を発注したマンションについても公表しています。

該当する管理組合では、まず公正取引委員会の発表資料や排除措置命令の内容を確認したうえで、自分たちのマンションの施工会社選定がどのように行われていたのか、当時の資料を確認することが重要です。

具体的には、施工会社の公募資料、見積書、比較表、理事会議事録、修繕委員会議事録、総会議案書、設計コンサルタントとの契約書などが確認資料として考えられます。

ただし、今回対象となったマンションであることだけを理由に、直ちに管理組合に一定額の損害が生じていたと判断できるわけではありません。

実際に損害賠償請求などを検討する場合には、談合によって工事価格がどの程度影響を受けたのか、法的な請求が可能なのかなどについて、弁護士などの専門家を交えて慎重に検討する必要があります。

まとめ

2026年9月28日、公正取引委員会は、関東地区のマンション大規模修繕工事をめぐる談合問題について、設計コンサルタント会社2社と施工会社40社の計42社の独占禁止法違反を認定しました。

対象となった工事は171件に上り、施工会社37社への課徴金は合計16億3,788万円となっています。

今回の問題は、単なる施工会社同士の価格調整にとどまらず、管理組合を支援する立場である設計コンサルタントが受注調整に関与していた点に大きな特徴があります。

今後、大規模修繕工事を予定している管理組合では、工事金額だけでなく、設計コンサルタントと施工会社との関係、施工会社の募集方法、見積比較方法などを含め、施工会社選定の透明性を確保することがこれまで以上に重要になります。

以上です。更に詳しい情報が知りたい方はエースマンション管理士事務所へお気軽にご相談ください。

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