マンションにおいて、エレベーターは日常生活に欠かせない重要な共用設備の一つです。

特に高層階にお住まいの方や高齢者、小さなお子様がいる世帯にとって、エレベーターが故障して長期間停止することは生活に大きな影響を与えます。

そのため、管理組合としては日頃の保守点検だけでなく、「どのような保守契約を締結しているのか」「将来いつ頃リニューアルが必要になるのか」まで把握しておくことが重要です。

今回は、エレベーターの保守点検と「フルメンテナンス契約」「POG契約」の違い、さらに築30年前後で検討することになるエレベーターリニューアルについて解説します。

エレベーターは定期的な保守点検が重要

エレベーターには、制御盤、巻上機、ドア装置、安全装置など多くの機器が使用されています。

日常的には問題なく動いているように見えても、部品の摩耗や劣化は少しずつ進行しています。

そのため、専門の保守会社による点検・調整・給油・清掃などを継続して行い、異常や劣化を早期に発見することが重要です。

国土交通省でも「昇降機の適切な維持管理に関する指針」や「エレベーター保守・点検業務標準契約書」を公表しており、所有者・管理者が適切に維持管理することの重要性を示しています。

管理組合としては、単に「毎月点検してもらっているから大丈夫」と考えるのではなく、点検内容や保守契約の内容まで確認しておくことが大切です。

エレベーターの保守契約には大きく2種類ある

エレベーターの保守契約は、大きく分けると次の2種類があります。

  • フルメンテナンス契約(FM契約)
  • POG契約

どちらも定期的な点検を行うという点では共通していますが、大きな違いは「部品交換や修理費用が契約料金に含まれているか」です。

フルメンテナンス契約とは?

フルメンテナンス契約は、通常の点検・清掃・給油・調整などに加えて、契約範囲内の部品交換や修理についても月々の保守料金に含める契約です。

例えば、経年劣化によって一定の部品交換が必要になった場合でも、契約対象となっている部品であれば、原則としてその都度大きな修理費用を支払う必要がありません。

そのため、毎年のエレベーター維持費をある程度平準化しやすいというメリットがあります。

一方で、部品交換等の費用をあらかじめ織り込んだ契約となるため、一般的にPOG契約よりも毎月の保守料金は高くなります。

なお、「フルメンテナンス」という名称であっても、すべての修理・交換が無条件で含まれるわけではありません。契約によって対象外となる部品や工事がありますので、実際には契約書や仕様書の確認が重要です。

POG契約とは?

POGとは、Parts(パーツ)・Oil(オイル)・Grease(グリース)の頭文字を取ったものです。

POG契約では、基本的な点検、清掃、給油、調整などは月々の保守料金に含まれますが、劣化した部品の交換や修理などについては原則として別途費用が発生します。

そのため、フルメンテナンス契約と比較すると毎月の保守料金を抑えやすい反面、故障や部品交換が発生した年には修繕費が大きくなる可能性があります。

フルメンテナンス契約とPOG契約の違い

項目フルメンテナンス契約POG契約
定期点検含む含む
清掃・給油・調整含む含む
一定の部品交換・修理契約範囲内で含む原則別途費用
月々の保守料金比較的高い比較的安い
修理費の予測平準化しやすい年度によって変動しやすい

したがって、「フルメンテナンス=高い」「POG=安い」という月額料金だけで判断するのではなく、部品交換や修理費用まで含めた中長期的な総コストで比較することが重要です。

結局、管理組合はどちらを選べばいい?

フルメンテナンス契約とPOG契約は、どちらが必ず優れているというものではありません。

例えば比較的新しいエレベーターで、大きな部品交換が当面想定されにくい場合には、POG契約によって保守費用を抑えるという考え方もあります。

一方、設置から年数が経過して部品交換が増えてくると、POG契約ではその都度修理費用が発生します。

管理組合としては、次のような点を総合的に比較することが重要です。

  • エレベーターの経過年数
  • 過去の故障・部品交換履歴
  • 今後想定される部品交換
  • FM契約とPOG契約の年間費用差
  • 修繕積立金の状況
  • 将来のリニューアル予定

特にPOG契約の場合は、「保守料金が安くなった」という点だけを見るのではなく、将来発生する部品交換費用をどのように負担するのかについても整理しておく必要があります。

エレベーターは30年頃になるとリニューアルも検討

そして、管理組合が忘れてはいけないのがエレベーターの「リニューアル」です。

適切な保守点検を続けていても、エレベーターを永久に使用できるわけではありません。

設置から長期間が経過すると、次のような問題が出てきます。

  • 主要機器の経年劣化
  • 故障頻度の増加
  • 交換部品の供給終了
  • 制御装置などの旧式化
  • 現在の安全基準や耐震性能との差
  • 新しい機種との省エネ性能の差

メーカーによって考え方に多少違いがありますが、一般的には設置後25~30年程度がリニューアルを検討する一つの時期となります。

そのため、築30年になってから突然検討を始めるのではなく、築25年を超えたあたりから長期修繕計画に更新費用を反映し、資金計画を立てておくことが重要です。

リニューアル=エレベーターを丸ごと交換するとは限らない

エレベーターのリニューアルというと、「既存のエレベーターを全部撤去して新品に交換する」と思われる方もいるかもしれません。

しかし実際には、既存設備を活用しながら、制御盤、巻上機、ドア装置、操作盤などの主要な機器を更新する方法もあります。

どこまで交換するかによって、工事費、工期、エレベーターの停止期間なども変わります。

特にマンションでは、工事期間中にエレベーターが使用できなくなることが大きな問題になります。

高齢者や車いす利用者、ベビーカーを利用する世帯などへの影響もありますので、価格だけではなく、「何日間エレベーターが停止するのか」についても比較検討することが重要です。

リニューアル費用は早めに長期修繕計画へ

エレベーターリニューアルは、マンションの設備工事の中でも比較的大きな支出となります。

しかも、大規模修繕工事、給水設備、排水設備、機械式駐車場など、他の大型修繕と実施時期が重なることもあります。

そのため、「30年経ったら見積りを取ればいい」という考え方では、資金計画が間に合わない可能性があります。

築25年を超えてきたマンションでは、次の項目を確認しておくことをおすすめします。

  • 現在のエレベーターの設置時期
  • メーカー・機種
  • 現在の保守契約の内容
  • 部品供給状況
  • メーカーのリニューアル推奨時期
  • リニューアルの概算工事費
  • 想定されるエレベーター停止期間

これらを早めに確認し、長期修繕計画や修繕積立金の資金計画へ反映しておくことが重要です。

まとめ

エレベーターは、マンション居住者の生活を支える重要な設備です。

保守契約にはフルメンテナンス契約とPOG契約があり、単純に月額料金だけを比較するのではなく、部品交換や修理費用を含めた中長期的な視点で判断することが重要です。

また、適切な保守を続けていても、設置から25~30年程度経過するとリニューアルを検討する時期がやってきます。

特に築30年前後のマンションでは、エレベーター更新と大規模修繕工事などが重なる可能性もあります。

「まだ動いているから大丈夫」ではなく、早い段階から保守契約とリニューアル計画をセットで確認し、長期修繕計画や修繕積立金の資金計画に反映していくことが大切です。

以上です。更に詳しい情報が知りたい方はエースマンション管理士事務所へお気軽にご相談ください。

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