マンションの大規模修繕工事では、近年の工事費上昇などにより、修繕積立金だけでは工事費を賄えないケースがあります。
資金が不足する場合の選択肢の一つが、金融機関等からの借入れです。
なかでも、住宅金融支援機構の「マンションすまい・る融資(マンション共用部分リフォーム融資)」は、大規模修繕工事などを行う管理組合が利用できる代表的な融資制度です。
しかし、ここで注意したいのが融資金利の上昇です。
2024年10月には年0.97%だった通常金利が、2026年9月には年1.51%となっています。
今回は、住宅金融支援機構の融資金利がどの程度上昇しているのか、また大規模修繕工事で借入れを利用する場合に管理組合が注意したいポイントを解説します。
「マンションすまい・る融資」とは
「マンションすまい・る融資」は、住宅金融支援機構が行っているマンション管理組合向けの融資制度です。
正式には「マンション共用部分リフォーム融資」といい、マンションの共用部分の改良工事などを行う際に利用することができます。
大規模修繕工事のほか、一定の条件を満たす給排水設備、エレベーター、機械式駐車場などの改修にも利用できる場合があります。
主な特徴は次のとおりです。
- 管理組合が借入れを行うことができる
- 申込時の金利が全期間固定される
- 一定の条件を満たせば長期返済も可能
- 管理計画認定などによる金利引下げ制度がある
大規模修繕工事で数千万円単位の資金不足が発生した場合などに、検討されることの多い制度です。
2026年9月の通常金利は年1.51%
2026年9月現在、返済期間が1年以上10年以内の場合の通常金利は、年1.51%です。
| 条件 | 金利 (返済期間10年以内) |
|---|---|
| 通常 | 年1.51% |
| マンションすまい・る債の積立て または管理計画認定の取得 | 年1.31% |
| マンションすまい・る債の積立て かつ管理計画認定の取得 | 年1.11% |
「マンションすまい・る債」の積立て、または管理計画認定を取得している場合には、通常金利から年0.2%引き下げられます。
さらに、両方の条件を満たしている場合には年0.4%の引下げとなります。
なお、耐震改修工事、浸水対策工事、省エネルギー対策工事など、住宅金融支援機構が定める一定の工事を行う場合には、さらに低い金利が適用される場合があります。
※融資金利は毎月見直されます。実際に借入れを検討する際には、住宅金融支援機構が公表している最新金利をご確認ください。
2024年10月は年0.97%だった
ここで注目したいのが、ここ数年の金利上昇です。
2024年10月の通常金利は年0.97%でした。
それが2026年9月には年1.51%となっています。
| 時期 | 通常金利 |
|---|---|
| 2024年10月 | 年0.97% |
| 2026年9月 | 年1.51% |
約2年間で0.54ポイント上昇したことになります。
2024年10月時点では、「マンションすまい・る債」の積立てまたは管理計画認定による優遇後の金利は年0.77%、両方を満たす場合は年0.57%でした。
低金利の時期と比較すると、管理組合が負担する利息は確実に増えています。
5,000万円を10年間借りるとどのくらい違う?
金利が0.97%から1.51%へ上昇すると、実際の返済額はどの程度変わるのでしょうか。
5,000万円を10年間、元利均等返済で借りた場合を概算すると、次のようになります。
| 金利 | 毎月返済額 | 総利息額 |
|---|---|---|
| 年0.97% | 約43.7万円 | 約248万円 |
| 年1.51% | 約44.9万円 | 約390万円 |
同じ5,000万円を10年間借りても、金利上昇によって総利息額は約142万円増加します。
借入額が1億円であれば、単純計算では影響もおおむね2倍になります。
「0.54%しか違わない」と感じるかもしれませんが、大規模修繕工事のように借入額が大きくなると、わずかな金利差でも総返済額には相応の差が生じます。
金利が上がっても、借入れが悪いわけではない
ここで重要なのは、金利が上がったからといって、管理組合の借入れそのものが悪いということではありません。
例えば、大規模修繕工事に必要な資金が不足しているにもかかわらず、借入れを避けるために必要な工事まで先送りしてしまうと、建物の劣化が進み、将来的により多額の修繕費が必要になる可能性があります。
一方、不足額をすべて一時金として区分所有者から徴収すると、一戸あたり数十万円から100万円を超える負担が発生するケースも考えられます。
そのため、実際の資金計画では、
- 現在保有している修繕積立金
- 一時金
- 借入れ
などを組み合わせる方法も考えられます。
大切なのは、「借りるか、借りないか」という二択で考えるのではなく、マンションの資金状況に応じて適切な方法を選択することです。
借入額そのものを抑える検討も重要
金利が上昇している状況では、必要資金のすべてを借りるのではなく、借入額をできるだけ抑えることも重要です。
例えば、次のような方法が考えられます。
- 工事項目を精査する
- 今回実施する必要性が低い工事を次回へ回す
- 修繕積立金から支出できる金額を検討する
- 一部を一時金で賄う
- 補助金や助成金が利用できないか確認する
ただし、借入額を減らすことだけを目的として、本来必要な修繕工事まで削減することは適切ではありません。
建物の劣化状況や長期修繕計画を確認したうえで、「今回行うべき工事」と「次回へ回せる工事」を整理することが重要です。
管理計画認定による0.2%の金利引下げ
これから借入れを検討する管理組合では、管理計画認定制度にも注目したいところです。
管理計画認定を取得しているマンションでは、マンションすまい・る融資の金利が年0.2%引き下げられます。
2026年9月の場合、返済期間10年以内であれば、
通常:年1.51%
↓
管理計画認定取得:年1.31%
となります。
また、「マンションすまい・る債」の残高がある場合にも年0.2%の金利引下げがあり、管理計画認定と両方の条件を満たせば年1.11%となります。
借入額が数千万円から1億円規模になる場合には、0.2%の違いでも無視できません。
今後、大規模修繕工事で借入れを利用する可能性があるマンションでは、融資を申し込む直前だけではなく、早い段階から管理計画認定の取得について検討する価値があります。
借入れは「今回の工事」だけを見て決めない
大規模修繕工事で借入れを検討する際、特に注意したいのが、現在予定している工事だけを見て資金計画を作らないことです。
借入れを行った場合、その後は借入金を返済しながら、次回以降の修繕工事に備えて修繕積立金を積み立てていかなければなりません。
多額の借入れによって毎月の返済負担が大きくなると、次回の大規模修繕工事に向けた資金が十分に積み立てられず、将来再び資金不足になる可能性があります。
そのため、借入れを検討するときには、
- 現在の修繕積立金残高
- 大規模修繕工事の総工事費
- 工事後に残しておく修繕積立金
- 借入額
- 返済期間
- 毎月の返済額
- 現在の修繕積立金の徴収額
- 今後予定されている修繕工事
- 次回大規模修繕工事までの資金収支
などを一体的に確認する必要があります。
工事直前に資金不足へ気付かないことが重要
大規模修繕工事の資金不足は、工事を実施する直前になって突然発生するものではありません。
長期修繕計画と修繕積立金の収支計画を定期的に確認していれば、数年前からある程度予測することができます。
ところが、長期修繕計画を長期間見直していなかったり、近年の工事費上昇が計画に反映されていなかったりすると、工事直前になって多額の資金不足が判明することがあります。
借入れはそのような資金不足を解消する有効な方法の一つですが、金利が上昇している現在では、これまで以上に早期の資金計画が重要になっています。
まとめ
住宅金融支援機構の「マンションすまい・る融資」は、大規模修繕工事などで資金が不足する管理組合にとって、有力な資金調達手段です。
しかし、融資金利は上昇しています。
返済期間10年以内の通常金利は、2024年10月の年0.97%から、2026年9月には年1.51%まで上昇しています。
大規模修繕工事では、工事費そのものの上昇に加えて、借入れを利用する場合には金利負担についても考える必要があります。
一方で、必要な工事を無理に先送りすることが適切とは限りません。
修繕積立金、一時金、借入れ、工事内容の見直しなどを組み合わせながら、長期修繕計画と今後の資金収支を踏まえて判断することが重要です。
特に、大規模修繕工事を数年以内に予定しているマンションでは、工事直前になって資金不足に気付くことがないよう、早めに長期修繕計画と修繕積立金の状況を確認しておきましょう。
以上です。更に詳しい情報が知りたい方はエースマンション管理士事務所へお気軽にご相談ください。

