マンションの排水管は、台所・浴室・洗面・洗濯機など、生活排水が集まる重要な設備です。外からは見えないため意識されにくいものの、内部には油や石けんカス、髪の毛などが蓄積していきます。長年放置すると“詰まり”や“逆流”、さらには“階下漏水”の原因にもなりかねません。


見えないところで劣化が進む「排水管」

排水管内部では、日々の生活排水に含まれる油分や石けんカス、食材のかすなどが少しずつこびりついていきます。この汚れを放置すると、水の流れが悪化し、やがて固着・閉塞してしまうことも。さらに、下階への漏水トラブルに発展すると、修繕や保険対応に多額の費用が発生します。


排水管洗浄の目的と仕組み

定期的に行われる排水管洗浄では、高圧洗浄車を使って管内の汚れを除去します。専用ホースを各住戸内の排水口(台所・浴室・洗面・洗濯機など)に挿入し、内壁に付着した汚れを高圧水で一気に洗い流します。作業は1戸あたり15〜30分程度で、通室内に入るため在宅が必要です。


定期実施が大切な理由

排水管内部の汚れは年々蓄積していきます。定期洗浄を怠ると、油や髪の毛が固着して通常の水流では流れなくなり、最終的には詰まりや漏水につながります。
特に築20年以上の建物では、配管内部のサビやスケール(汚れの層)も進行しており、最低年1回の洗浄が理想的です。


実施率を下げる落とし穴:「賃貸住戸の非協力」

管理組合が排水管洗浄を企画しても、賃貸住戸の協力が得られにくいケースが少なくありません。

  • オーナーと賃借人の連絡が滞り、案内が十分に伝わらない
  • 平日昼間の実施で立ち会いが難しい
  • 「自分には関係ない」と思われてしまう

こうした理由で「不在宅」が増えると、全体の実施率が下がり、共用排水管の詰まりリスクが残ってしまいます。
特に縦管(共用部分)と各戸の枝管が接続する部分で汚れが残ると、全体に悪影響を及ぼす可能性があります。


管理組合でできる工夫

  • オーナー経由での周知を徹底: 管理会社から所有者に直接案内を送り、入居者への伝達を促す。
  • 実施日程の柔軟化: 土日実施や再訪日を設けることで参加率を向上。
  • 事前案内文での啓発: 「詰まりや漏水の防止につながる重要な作業」であることを強調。
  • 不在宅のフォロー体制: 後日再訪の可否、鍵預かり方法などを事前に決めておく。

排水管洗浄会社選定のポイント

  • 実施報告書・写真記録の提出
  • 不在宅対応の仕組み(再訪・共用部側からの洗浄など)
  • 作業員のマナー・住戸内での配慮
  • 管理会社との連携体制

まとめ:小さなコストで大きなトラブルを防ぐ

排水管洗浄は1戸あたり数千円〜1万円程度で実施可能です。詰まりや階下漏水の修繕費用・保険対応と比べれば、安価な“予防投資”といえます。
区分所有者・賃借人ともに理解と協力を得ながら、定期的な実施を継続することが、安心・快適な住環境を守る最良の方法です。

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