マンションの大規模修繕工事には、数千万円、規模によっては億単位の費用がかかります。
「大規模修繕に使える助成金はないの?」
管理組合の方から、このようなご相談を受けることがあります。
実は東京都内では、マンションの修繕やその準備に利用できるさまざまな助成制度があります。
ただし、東京都内で一律の制度ではなく、区によって内容が大きく異なるのが特徴です。
今回は、東京都内のマンション管理組合が利用できる主な助成制度について紹介します。
※本記事は2026年度(令和8年度)の情報を中心に作成しています。助成制度は年度途中で終了・変更されることがありますので、実際に利用する際は必ず各自治体へ最新情報をご確認ください。
大規模修繕の助成金にはいくつか種類がある
「大規模修繕の助成金」といっても、すべてが工事費そのものを補助してくれるわけではありません。
大きく分けると、次のような制度があります。
① 劣化診断・建物調査への助成
大規模修繕工事の前に行う、
- 外壁調査
- 防水調査
- 鉄部調査
- 給排水管調査
- 設備調査
などの費用を助成する制度です。
東京都内では比較的多くの区で導入されています。
② 大規模修繕工事そのものへの助成
外壁改修、防水工事、鉄部塗装、給排水管改修など、実際の工事費の一部を助成する制度です。
こちらは実施している自治体が限られています。
③ 融資・保証料・利子への助成
住宅金融支援機構の「マンション共用部分リフォーム融資」などを利用して大規模修繕を行う場合に、
- 利子
- 債務保証料
などを補助する制度です。
「工事費を直接もらえる制度」とは異なるため注意しましょう。
東京都内の主な助成制度
千代田区
千代田区では、マンションの大規模修繕に向けた劣化診断調査費について助成制度があります。
助成内容は、
対象経費の3分の2・上限50万円
です。
さらに、劣化診断後に国土交通省のガイドラインに基づいて長期修繕計画を作成・見直しした場合には、
対象経費の3分の2・上限80万円
の助成制度があります。
大規模修繕の前段階となる「建物診断」と「長期修繕計画」の両方を支援している点が特徴です。
中央区
東京都内でも特に注目したいのが中央区です。
中央区には「分譲マンション計画修繕調査費助成」があり、大規模修繕に向けた調査費について、
調査費の3分の1
が助成されます。
上限額は調査内容・戸数によって異なり、建物調査では最大47万円、給排水管調査では最大16万円です。
さらに中央区の大きな特徴が、
「分譲マンション共用部分改修費用助成」
です。
築20年以上など一定の条件を満たしたマンションについて、
- 壁面の改修
- 鉄部の塗装・取替え
- 屋上・バルコニー・外部共用廊下の防水
- 給排水管の更生・取替え
などが対象になります。
助成限度額は、
設計費:最大100万円
工事費:最大1,000万円
となっています。
東京都内でも、大規模修繕工事そのものに対する支援が充実している自治体の一つといえるでしょう。
港区
港区では「分譲マンション等管理支援事業」として、マンションの劣化診断費用を助成しています。
対象となるのは、
- 屋上
- 壁面
- 鉄部
- 給排水管
- 電気設備
などの調査です。
助成額は、
劣化診断費用の2分の1・上限50万円
です。
建築後5年以上経過していることなどが条件となっています。
なお、契約・診断を行った後から申請することはできないため、事前申請が重要です。
文京区
文京区にも「マンション劣化診断調査費助成」があります。
大規模修繕を実施するための劣化診断について、
税抜き調査費の50%・上限50万円
が助成されます。
対象には、
- 外壁・内壁・床など
- 鉄部
- 屋上・バルコニー等の防水
- 給排水設備
- 電気・ガス・通信設備
- エレベーター
など幅広い項目が含まれます。
原則として建築後5年以上経過したマンションが対象です。
また、文京区には共用部分のバリアフリー化工事についても助成制度があり、対象工事費の10%、最大100万円まで助成される制度があります。
台東区
台東区では「マンション計画修繕調査費助成」があります。
大規模修繕工事や長期修繕計画作成のために行う、
- 建物調査
- 給排水管調査
などが対象です。
助成額は、
調査費(税抜)の3分の1
です。
上限額は戸数などによって異なり、
建物調査:最大67万円
給排水調査:最大29万円
となっています。
分譲マンションの場合、管理規約の整備や総会決議、台東区のマンション管理組合登録制度への登録なども条件になります。
墨田区
墨田区では、大規模修繕に向けた建物診断や長期修繕計画の作成・見直しについて支援しています。
「分譲マンション計画修繕調査支援制度」では、
費用の3分の1・上限50万円
の補助があります。
さらに、住宅金融支援機構の「マンション共用部分リフォーム融資」を利用して修繕工事を行う管理組合に対する支援もあります。
2026年度からは、マンション管理センターへ支払う債務保証料について、
全額・上限50万円
を補助する制度がスタートしています。
江東区
江東区にも「マンション計画修繕調査支援事業」があります。
大規模修繕や長期修繕計画作成に向けた建物調査費について助成する制度です。
また、大規模修繕工事の資金として住宅金融支援機構の融資を利用する場合には、
債務保証料の2分の1・上限50万円
を助成する「マンション共用部分リフォーム支援事業」もあります。
大規模修繕前の調査と、工事資金の調達の双方について支援制度が用意されています。
豊島区
豊島区では「分譲マンション計画修繕調査費助成」を実施しています。
長期修繕計画の作成や大規模修繕工事のために実施する建物診断(劣化診断)について、
費用の2分の1・上限20万円
が助成されます。
対象となるのは、原則として建築後8年以上経過した分譲マンションです。
また、管理規約が整備されていることや、管理組合の集会で計画修繕調査について決議されていることなども条件となります。
北区
北区では、分譲マンションの管理組合が実施する劣化診断について助成しています。
対象となるのは原則として建築後10年を経過した分譲マンションです。
助成額は、
劣化診断費用の20%・上限20万円
となっています。
大規模修繕工事を検討する際の建物の現状把握に利用できる制度です。
区によってこれだけ違う
主な制度を整理すると、次のようになります。
| 区 | 主な支援内容 | 主な助成内容 |
|---|---|---|
| 千代田区 | 劣化診断 | 2/3・上限50万円 |
| 千代田区 | 長期修繕計画作成・見直し | 2/3・上限80万円 |
| 中央区 | 計画修繕調査 | 1/3・建物調査最大47万円等 |
| 中央区 | 共用部分の修繕工事 | 工事費最大1,000万円 |
| 港区 | 劣化診断 | 1/2・上限50万円 |
| 文京区 | 劣化診断 | 1/2・上限50万円 |
| 台東区 | 計画修繕調査 | 1/3・建物調査最大67万円等 |
| 墨田区 | 計画修繕調査 | 1/3・上限50万円 |
| 墨田区 | 融資の債務保証料 | 全額・上限50万円 |
| 江東区 | 計画修繕調査 | 調査費の一部 |
| 江東区 | 融資の債務保証料 | 1/2・上限50万円 |
| 豊島区 | 計画修繕調査 | 1/2・上限20万円 |
| 北区 | 劣化診断 | 20%・上限20万円 |
このように、同じ東京都内でも制度にはかなり大きな差があります。
特に注目したいのは、**「調査費だけが対象なのか」「実際の工事費まで対象になるのか」**という違いです。
東京都にも大規模修繕の助成制度がある
区の制度だけでなく、東京都にも「マンション改良工事助成制度」があります。
これはマンション共用部分の外壁塗装、屋上防水、バリアフリー化などを行う際に、住宅金融支援機構の「マンション共用部分リフォーム融資」を利用する管理組合に対して行われるものです。
助成内容は、
最長20年間、年1%を上限とした利子補給
です。
そのため、
東京都の利子補給+区の保証料助成
といった形で制度を組み合わせられるケースもあります。
大規模修繕工事で借入れを検討している管理組合は、確認しておきたい制度です。
助成金を利用するときの注意点
大規模修繕の助成制度を利用する場合、最も注意したいのが申請のタイミングです。
多くの制度では、
「契約前」「調査開始前」「工事着工前」
の申請が条件となっています。
「大規模修繕が終わったので助成金を申請しよう」と考えても、原則として間に合いません。
また、
- 管理規約が整備されている
- 総会決議を取得している
- 築年数の条件を満たしている
- 過去一定期間に同じ助成を受けていない
- 区のマンション登録制度に登録している
など、自治体ごとに条件があります。
さらに、助成制度には予算があります。
年度途中でも予算額に達すると受付が終了することがあるため、大規模修繕の計画段階から確認しておくことが重要です。
まとめ
東京都内には、マンションの大規模修繕に関連するさまざまな助成制度があります。
ただし、その内容は区によって大きく異なります。
特に、
①劣化診断・建物調査
②長期修繕計画
③設計費
④大規模修繕工事費
⑤融資の利子・保証料
のどこまで助成対象になるのかを確認することがポイントです。
数十万円程度の調査費助成だけでなく、中央区のように大規模修繕工事そのものについて大きな助成を受けられるケースもあります。
大規模修繕工事を検討する際には、施工会社から見積りを取るだけではなく、マンション所在地の自治体に利用できる助成制度がないかを早い段階で確認することをおすすめします。
また、助成制度は毎年度変更される可能性があります。
「以前調べたときにはなかったから」と判断せず、大規模修繕を計画するタイミングで改めて確認してみましょう。
更に詳しい情報が知りたい方はエースマンション管理士事務所へお気軽にご相談ください。

