最近、マンション管理会社から「管理委託費を値上げしたい」という申し入れを受ける管理組合が増えています。
人件費や物価、設備点検費などが上昇しているため、ある程度の値上げが必要になるケースもあります。
しかし、管理会社から値上げを求められたからといって、提示された金額をそのまま受け入れる必要はありません。
一方で、値上げをすべて拒否すればよいというものでもありません。
大切なのは、
「なぜ値上げが必要なのか」
「値上げ額は妥当なのか」
「他に見直せる部分はないのか」
を管理組合としてきちんと確認することです。
今回は、管理会社から管理委託費の値上げを求められた際に、管理組合が確認しておきたい5つのポイントを分かりやすく解説します。
1.まず「管理費」と「管理委託費」の違いを確認
最初に整理しておきたいのが、「管理費」と「管理委託費」は別のものという点です。
区分所有者が毎月管理組合へ支払っているお金が「管理費」です。
管理費は、例えば次のような支出に使われています。
- 管理会社への管理委託費
- 共用部分の電気料金
- 設備の保守点検費
- 保険料
- 清掃費
- 植栽管理費
- その他、日常的なマンション管理に必要な費用
このうち、管理組合が管理会社へ支払っている費用が「管理委託費」です。
そのため、管理会社から管理委託費の値上げを求められたとしても、
「管理委託費が上がる=すぐに各区分所有者の管理費も値上げする」
ということではありません。
まずは管理組合全体の収支を確認したうえで判断する必要があります。
2.値上げの「理由」と「内訳」を確認する
管理会社から値上げの申し入れがあった場合、最初に確認したいのが値上げの根拠です。
例えば、
「人件費が上昇しているため、管理委託費を月額10万円値上げしたい」
と説明されたとします。
この場合、単に「人件費が上がったから」という説明だけで判断するのではなく、
- 管理員業務はいくら上がるのか
- 清掃業務はいくら上がるのか
- 事務管理業務はいくら上がるのか
- 設備管理業務はいくら上がるのか
- その他、どの業務が値上げ対象なのか
など、できるだけ具体的な内訳を確認しましょう。
例えば、現在の管理委託費が月額50万円で、突然60万円への値上げを求められた場合、年間では120万円の負担増になります。
管理組合にとっては決して小さな金額ではありません。
「物価が上がっているので10%値上げします」という説明だけでは、本当に10%上げる必要があるのか判断できません。
値上げそのものを否定するのではなく、まずは「何が、いくら上がるのか」を確認することが重要です。
3.現在の管理仕様に無駄がないか確認する
管理委託費の値上げを求められたタイミングは、現在の管理内容を見直す良い機会でもあります。
例えば、次のような項目を確認してみましょう。
- 管理員の勤務日数
- 管理員の勤務時間
- 日常清掃の回数
- 定期清掃の回数
- 設備点検の内容や回数
- 管理会社による理事会・総会支援の内容
マンションによっては、10年以上前に決めた管理内容を、そのまま現在まで続けているケースもあります。
例えば、
「管理員を週6日配置しているが、本当に週6日必要なのか」
「定期清掃を年6回行っているが、年4回でも十分ではないか」
などを検討できる場合があります。
管理会社の人件費単価が上昇したとしても、業務内容を整理することで管理委託費全体の上昇を抑えられる可能性があります。
ただし、コスト削減だけを優先して管理仕様を下げすぎると、清掃状態の悪化や管理品質の低下につながる可能性があります。
「いくら安くできるか」ではなく、「必要な管理品質を保ちながら無駄をなくせるか」という視点で考えることが大切です。
4.他社と比較して金額が妥当か確認する
管理会社から値上げを提示された場合、現在の管理委託費が適正な金額なのか確認することも大切です。
例えば、他の管理会社に同じような条件で見積もりを依頼することで、ある程度の相場を確認できます。
ただし、ここで注意したいのが、
「1戸あたりの管理費が高い・安い」だけで判断しないことです。
マンションの管理費は、次のような条件によって大きく異なります。
- マンションの戸数
- 管理員の勤務時間
- 清掃範囲
- エレベーターの台数
- 機械式駐車場の有無
- 共用施設の種類
- 設備の種類や数
例えば、50戸のマンションと200戸のマンションでは、単純に1戸あたりの管理費を比較してもあまり意味がありません。
できるだけ同じ管理内容・同じ条件で比較することが重要です。
また、他社から安い見積もりが出たからといって、必ずしも管理会社を変更した方がよいとは限りません。
価格だけでなく、管理品質や対応力なども含めて判断しましょう。
5.管理会社以外の支出も見直してみる
管理委託費が上がった場合でも、すぐに区分所有者が支払う管理費を値上げする必要があるとは限りません。
この機会に、管理費会計全体を確認してみることをおすすめします。
例えば、次のような支出です。
- 共用部分の電気料金
- マンション保険
- エレベーター保守費
- 機械式駐車場保守費
- 植栽管理費
- 設備点検費
- 各種契約サービス
長期間、同じ会社と同じ条件で契約しているものについては、一度見直してみる価値があります。
1つひとつの削減額は小さくても、複数の契約を見直すことで、年間では大きな金額になる場合があります。
「管理会社の費用が上がったから、その分だけ管理費を上げる」
と考えるのではなく、まず管理費会計全体を確認することが大切です。
値上げを断り続けることにもリスクがある
管理組合としては、当然ながらできるだけ値上げを避けたいと考えるでしょう。
しかし、値上げを拒否すること自体が目的になってしまうのも注意が必要です。
管理会社側でも、管理員や清掃員の人件費、協力会社への外注費などが上昇しています。
採算が合わない状態が続けば、
- 管理員の勤務時間が短くなる
- サービス内容が縮小される
- 担当者の対応が悪くなる
- 管理会社から契約更新を断られる
といった可能性もあります。
特に、現在の管理会社に大きな問題がなく、マンションの事情をよく理解してくれているのであれば、適正な範囲で値上げを受け入れた方がよいケースもあります。
大切なのは、
「値上げをするか・しないか」ではなく、「適正な金額で必要な管理サービスを受けられているか」
という視点です。
値上げされたからといって、すぐに管理会社を変更する必要はない
管理会社から値上げを求められると、理事会などで、
「それなら管理会社を変更した方がいいのでは?」
という意見が出ることがあります。
もちろん、現在の管理委託費が明らかに高い場合や、管理会社の対応にも問題がある場合には、管理会社の変更を検討することも一つの方法です。
しかし、管理会社を変更する場合には、
- 管理組合資料の引継ぎ
- 管理員の変更
- 管理費等の収納方法の変更
- 設備業者との契約整理
- 居住者への周知
など、さまざまな対応が必要になります。
また、新しい管理会社に変更したからといって、必ず管理品質が向上するとも限りません。
値上げ額だけを理由に管理会社を変更するのではなく、価格と管理品質の両方を比較することが重要です。
管理費そのものの値上げが必要なケースもある
管理委託費だけでなく、電気料金や保険料、設備の保守点検費など、マンションの日常管理に必要なさまざまな費用が上昇しています。
その結果、管理費会計が毎年赤字になっているマンションもあります。
このような状態で、
「値上げすると反対されるから」
という理由だけで管理費を据え置き続けると、将来的に必要な管理ができなくなる可能性があります。
まず無駄な支出がないかを確認し、それでも収支が改善しないのであれば、区分所有者が毎月支払う管理費そのものを見直すことも必要です。
値上げを先送りした結果、数年後に一気に大幅な値上げが必要になるよりも、早い段階から将来の収支を確認しておくことが大切です。
まとめ|値上げを拒否するのではなく「妥当性」を確認する
管理会社から管理委託費の値上げを求められた場合には、次の5つのポイントを確認してみましょう。
- 値上げの理由と内訳を確認する
- 現在の管理仕様に無駄がないか確認する
- 他社と比較して金額が妥当か確認する
- 管理会社以外の支出も見直す
- 値上げを拒否するリスクも考える
人件費や物価が上昇している現在、管理委託費が今後もずっと同じ金額で続くとは限りません。
だからこそ、管理組合として重要なのは、値上げを単純に拒否することでも、そのまま受け入れることでもありません。
「本当に必要な値上げなのか」
「金額は適正なのか」
「現在の管理内容に無駄はないのか」
を一つずつ確認し、管理組合として納得したうえで判断することが大切です。
管理委託費の妥当性や管理会社との交渉、管理仕様の見直しについて管理組合だけで判断することが難しい場合には、マンション管理士など第三者の専門家へ相談する方法もあります。
以上です。更に詳しい情報が知りたい方はエースマンション管理士事務所までお気軽にご相談ください。

