今回は長期修繕計画書作成時のポイントについてお話ししていきます。
1.長期修繕計画書とは?
長期修繕計画書とは、マンションの今後30年~35年の修繕計画・収支計画を作成し、いつどんな修繕工事を行ったらよいか、現状の修繕積立金で不足しないか、などを確認するための資料です。
2.長期修繕計画書の必要性
一昔前までは世の中全体の物価が安く、修繕費用も比較的安価であったため、詳細計画は練らずに必要性を感じた段階でその都度修繕工事を行い、対応する事も可能でした。しかし、近年は物価高騰や修繕費用の高騰が発生し、必要な修繕工事を実施できないマンションが増加しました。そのため、修繕積立金の改訂が各マンションで行われるのと同時に長期修繕計画書の需要も増加しました。
3.長期修繕計画書の書式
国土交通省で長期修繕計画書の標準書式を作成しているため、この書式を使用するのが無難です。ただ、個人的には収支計画グラフが見づらい印象があるので収支計画グラフはわかりやすいものに改良する方が宜しいかと思います。また、「管理計画認定制度」を取得する場合の認定基準に「長期修繕計画書は国土交通省標準書式に準拠していること」という条件があるため、完全オリジナル書式で作成すると認定を受けられない可能性があるので注意です。
4.大規模修繕工事のサイクル
長期修繕計画書の作成において、特に収支計画に大きな影響を及ぼすのが大規模修繕工事です。国土交通省のガイドラインでは「大規模修繕工事が2回含む計画とすること」とされております。また、大規模修繕工事のサイクルについては、15年サイクルで計画できるよう管理運営していくのがベストです。
5.工事費用の見込み方
年度別に予定修繕工事を記入していきますが、計画だからと言って概算の高額な費用を入れていくと、大幅に資金不足となるケースがあります。過去の実績金額や同等規模マンションの事例などを参考にできる限り現実的な工事費用で計画する事が重要です。
6.大きな支出の工事を押さえる
数十万単位の工事に着目しすぎず、大きな支出の工事を綿密に計画する事が大事です。例としては、大規模修繕工事・給排水管改修工事・エレベーター改修工事・建具関係改修工事です。見方によっては、小規模の工事の計画性が甘かったとしても、大きな支出の工事をしっかり押さえておけば修繕計画・収支計画に大きな狂いはないと私は思います。
7.修繕積立金の値上げ検討
修繕積立金の値上げ検討時は国土交通省の修繕積立金ガイドラインを参考にしましょう。必ずこの金額に合わせなくてはならない事はありませんが、区分所有者の合意を得るうえでの情報としては有効です。

8.駐車場会計は別会計に
修繕積立金会計と駐車場会計が同じ会計のマンションも多くあります。しかし、計画を練るうえでは会計を別に分けておく事が望ましいです。特に機械式駐車場が設置されているマンションでは、築年数が浅いうちは特に問題となりませんが、築15年を超えてくると高額部品の交換が必要となり、修繕積立金を圧迫する危険性があります。
9.長期修繕計画書は定期的に見直し
長期修繕計画書を作成したとしても、5年ごとに見直しが望ましいです。その他、見直し推奨時期としては、大規模修繕工事実施前後や社会情勢の大きな変化などが発生した際は長期修繕計画書の改訂が必要です。
以上です。更に詳しい情報が知りたい方は、エースマンション管理士事務所へお気軽にご連絡ください。