マンション管理組合の理事や監事は、区分所有者の中から選出される重要な役割です。しかし、実際には「忙しい」「責任が重い」「関心がない」といった声も多く聞かれます。そこで注目されているのが「役員報酬制度」です。
今回は、報酬を支払う管理組合と、支払わない(無報酬)管理組合の違い、それぞれのメリット・デメリット、そして実際の報酬相場について解説します。
1.役員報酬を「支払わない」方式の特徴
◎ メリット
- 管理費の負担が増えず、運営コストを抑えられる。
- 「区分所有者で協力して運営する」という意識が維持されやすい。
▲ デメリット
- 理事や監事の「なり手不足」につながりやすい。
- 責任や労力に見合う対価がなく、モチベーションが下がる可能性。
2.役員報酬を「支払う」方式の特徴
◎ メリット
- 理事や監事のなり手が増えやすくなる。
- 活動へのモチベーション・責任意識が高まりやすい。
▲ デメリット
- 管理費など運営コストが上昇する。
- 「報酬に見合っていない」「働きが不公平」といった意見が出やすい。
3.役員報酬の相場データ
国土交通省「マンション総合調査」によると、理事などに報酬を支払っている組合は全体の約23%です。まだ少数派ですが、近年増加傾向にあります。
| 方式 | 報酬の目安 |
|---|---|
| 理事長 | 年額 約39,000円(約3,000円/月) |
| 副理事長 | 年額 約18,000円(約1,500円/月) |
| 理事・監事 | 年額 約12,000〜15,000円(約1,000円/月) |
多くのマンションでは、「月額1,000〜3,000円程度」または「年一括1〜3万円」が一般的です。役職ごとに差を設ける場合もあります。
4.支払うかどうかを決める際のチェックポイント
- 理事・監事の業務量と責任範囲を明確化する。
- 管理規約に報酬支払いの条文があるか確認する。
- 管理組合の規模・財政状況に無理がないか試算する。
- 公平性・透明性のある基準づくり(支給額・対象・手続きなど)
- 報酬が「なり手確保」の実効策になるかどうか。
5.導入手順と運用上の注意点
- 理事会で検討方針をまとめる。
- 管理規約・使用細則に報酬条項を追加する(または改定)
- 総会で組合員の承認を得る。
- 支給額・方法(現金/振込)・会計処理を明確化する。
- 年末調整・源泉徴収など税務処理を忘れずに行う。
特に税務上は「雑所得」または「報酬」として扱われるケースがあり、年間の支給額・支払方法に応じて会計処理が必要です。
6.まとめ:報酬制度は“運営の成熟度”を示すひとつの指標
理事・監事は、組合員全員の資産を守る大切な役職です。無報酬が悪いわけではありませんが、負担が重くなる現代のマンション管理では、「報酬制度を検討すること」自体が組合の健全運営を見直す契機になります。
報酬を支払うかどうかは、「費用対効果」だけでなく、「人材確保」や「運営の持続性」といった観点から検討することが大切です。
エースマンション管理士事務所では、理事会の制度設計や管理規約改正のご相談にも対応しています。お気軽にご相談ください。


