多くのマンションで共通する悩みは、「会議は開かれているが、実質的な決定が進まない」こと。議題の理解不足、情報の非共有、理事間の温度差など。しかし、私が関わったマンションの中には、こうした課題を克服し、“理事会が自走する”体制を築いた例も少なくありません。本記事では、そうした成功事例に共通する「5つの要素」を解説します。
① 目的意識の共有:「何を決める理事会か」を明確に
多くの理事会は「報告中心」で終わってしまいます。
成功している理事会では、各回で明確な目的を設定しています。
- 今回は「長期修繕計画の改定方針を決定する」
- 次回までに「各社の見積条件を比較する」
このように、“決定型理事会”へと転換しているのが特徴です。これにより、理事会資料も「検討用」から「意思決定用」に変わります。
●ポイント
管理会社に議題草案を任せきりにせず、理事長や修繕担当理事が「会議のゴール設定」に関与すること。
② 情報共有の徹底:理事会資料は“前倒し”が基本
議論が停滞する最大の要因は、「当日初めて資料を見ること」です。活性化しているマンションでは、理事会の数日前に資料共有が徹底されています。
メール配布やクラウド共有(Googleドライブ・LINE WORKSなど)を活用し、理事が事前に疑問点を整理して臨む仕組みを整備しています。
●アドバイス
「理事会議題・資料一覧表」を運用することで、議題の履歴・担当者・進捗を“見える化”するのが効果的です。
③ 理事の役割分担:「チーム理事会」への転換
成功している理事会では、担当理事制度が機能しています。
- 修繕担当理事:修繕工事・長期修繕計画の調整
- 会計理事:収支・積立金・決算監査の確認
- 広報理事:掲示・回覧・アンケート集計
- 防災理事:訓練や備蓄品の整備
これにより「自分の領域」が生まれ、理事の発言率が大幅に向上します。特定の理事だけに負担が集中する状況から脱却できます。
●ポイント
理事会の冒頭で「前回担当事項の報告」時間を設けると、自然と全員参加型の会議になります。
④ 議事録+課題管理の見える化:「やりっぱなし」を防ぐ
議事録を“単なる記録”で終わらせず、次回への課題管理表として運用している組合は強いです。理事会後に「次回までの対応事項」「担当」「期限」を一覧にして共有するのがポイントです。
ToDoリスト形式でGoogleスプレッドシートやExcelを活用している例もあります。
●ポイント
こうした継続性が、理事交代時の引継ぎの質を左右します。
継続管理の“仕組み化”こそ、理事会活性化の根幹です。
⑤ 外部専門家・管理会社との協働:外の知恵を中に活かす
「理事会=自分たちで全てを決める場」と考える必要はありません。成功している組合ほど、外部の知見を戦略的に活用しています。
- 管理会社:事務・会計処理や技術提案の補助
- マンション管理士:法的助言・意思決定支援・合意形成の調整
- コンサルタント:大規模修繕・管理会社変更の専門支援
●ポイント
理事会が“判断”に集中できる環境を整えること。
外部支援は“依存”ではなく、“協働”が前提です。
まとめ:理事会が変わればマンションが変わる
理事会の活性化は、一部の熱意ある理事に頼るものではなく、情報・役割・継続の3つの仕組み化によって実現します。
結果として、
- 理事の入れ替わりがスムーズに
- 管理会社との協働関係が安定
- 管理組合の意思決定が迅速化
という好循環が生まれます。
“理事会が動くとマンションが変わる”──それを実感できる組合運営を目指しましょう。
更に詳しい情報が知りたい方はエースマンション管理士事務所へお気軽にご相談ください。


