「うちのマンションには光回線が引けないと言われた」
「各戸まで光が来ていない」
「管理会社から“工事が難しい”と言われた」
このような相談は、築30年・40年を超えるマンションでは決して珍しくありません。
特に、築年数が古いマンションでは、そもそも光ファイバーを想定していない配線設計になっているため、理事会として“何ができるのか”“何を決めればよいのか”が分からず、話が止まってしまうケースがよくあります。
本記事では、理事会目線で、
- なぜ光回線が導入できないと言われるのか
- どのような方式があるのか(VDSL方式を含む)
- 理事会としてどのような手順で進めるべきか
を整理して解説します。
1.なぜ「光回線が導入できない」と言われるのか
多くの場合、理由は次のいずれかです。
(1)共用部に光ファイバーが来ていない
光回線を各戸に届けるためには、まずマンションの共用部(MDF室・EPS・共用スペースなど)まで光ファイバーを引き込む必要があります。
しかし、古いマンションでは、
- そもそもNTTなどの通信事業者が光を引き込んでいない
- 管理組合が導入を検討したことがない
というケースが多く、その時点で「光が使えない」と誤解されがちです。
→ これは“導入できない”のではなく、“まだ導入していない”だけのケースが多いです。
(2)各戸への配線ルートが確保できない
仮に共用部まで光を引き込めたとしても、次のハードルは各住戸までどうやって配線するかです。
古いマンションでは、
- 電話線(メタル線)しか配管がない
- 空き配管がない
- 配管が細すぎて光ファイバーを通せない
といった問題が起こりやすいです。
ここで選択肢になるのが、「VDSL方式」などの代替方式です。
2.光回線の主な方式と「VDSL方式」とは
理事会として理解しておくべき主な方式は、次の3つです。
① FTTH(光ファイバーを各戸まで直接引く方式)※理想形
最も速度が速く、現在の標準的な方式です。
メリット
- 通信速度が安定
- 将来的な拡張性が高い
デメリット(古いマンションの場合)
- 各戸まで光ファイバーを新たに配線する工事が必要
- 共用部・専有部の工事調整が大変
- 工事費が高額になりがち
② VDSL方式(既存の電話線を使う方式)
古いマンションでよく採用される現実的な選択肢です。
仕組み(ざっくり)
- 共用部までは「光ファイバー」を引き込む
- そこから各戸へは「既存の電話線」を使ってインターネットを供給する
メリット
- 新たに壁内配線を大きく工事しなくて済むことが多い
- 比較的導入しやすい
デメリット
- FTTHに比べると通信速度が落ちる
- 将来的に限界がある(いずれはFTTHへ移行したくなる可能性)
ただし、「今よりは確実に改善する」ケースがほとんどです。
③ LAN配線方式(共用部で分岐し、各戸にLANケーブル)
比較的新しめのマンションや、大規模修繕と合わせて検討されることが多い方式です。
- 共用部にスイッチングハブなどを設置
- 各戸にLANケーブルを配線
メリット
- 速度が比較的安定
- 将来的な拡張性がある
デメリット
- 配線工事が大掛かりになりやすい
3.理事会として「何から始めるべきか」対応手順
ここが本記事の核心です。理事会としての現実的な進め方を整理します。
【ステップ①】現状の設備を把握する(現地調査)
まずは、次の点を確認します。
- 共用部(MDF室など)に光ファイバーが来ているか
- 住戸までの配管の状況(電話線の配管はあるか)
- 空き配管はあるか
→ 通信設備業者に現地調査を依頼するのが現実的です。
【ステップ②】通信事業者・施工業者に相談
理事会としては、以下のいずれかに相談するのが一般的です。
- NTT(フレッツ光)系の業者
- マンション向け通信設備業者
- 管理会社経由で紹介される業者
この段階で、
- FTTHが可能か
- VDSLなら可能か
- 工事費の目安はいくらか
といった提案を受けます。
【ステップ③】理事会で「方針」を決める
理事会として決めるべきポイントは次の3つです。
- どの方式を目指すか(FTTHか、まずはVDSLか)
- 工事費を管理組合負担とするか、個人負担とするか
- 総会にかけるかどうか(基本的には要総会決議)
特に、共用部工事を伴う場合は、総会決議が必要になることが一般的です。
【ステップ④】総会決議 → 工事実施
総会で可決されたら、工事を実施します。
この際、理事会として注意すべきポイントは、
- 工事範囲の明確化(共用部のみか、専有部も含むか)
- 工事スケジュール
- 住民への事前説明(騒音・立ち入りの有無など)
です。
4.よくある理事会の疑問と回答
Q1.「うちは古いから無理」と言われましたが、本当ですか?
→ ほぼ“無理ではありません”。
多くの場合、VDSL方式などの現実的な選択肢があります。
Q2. 費用はどれくらいかかりますか?
物件規模や方式によりますが、目安としては、
- 共用部への光引き込み:数十万円〜
- VDSL設備導入:さらに数十万円〜
といったレンジが多いです。
Q3. 住民全員の同意は必要ですか?
通常は総会の普通決議で足ります(規約や内容によっては特別決議の場合もあり)。
以上です。更に詳しい情報が知りたい方はエースマンション管理士事務所へお気軽にご相談ください。

