今回は管理組合の総会で難しい居住者への対応術についてお話ししていきます。
「また総会にあの人が来るのか……」
毎年の総会や理事会を前にこんな気持ちを抱いたことはありませんか?
どこのマンションにも“ちょっと困った居住者”はいるものです。
日頃は静かでも総会になると強く主張したり、感情的になったり、時には議事進行そのものを妨げるような行動をとる方もいます。
今回はそんな“難しい居住者”にどう対応すればよいか、事前準備から当日対応、事後のケアまでを総合的にご紹介します。
実際に管理組合をサポートする立場としての視点も交えて、実践的なヒントをお届けします。
よくある“難しい居住者”のタイプと特徴
難しい居住者とひとくくりに言っても、タイプは様々。よく見られるタイプを4つに分類してみましょう。
● クレーム体質型
常に何かに不満を抱えており、議案に対しても「納得いかない」「もっとちゃんとやるべきだ」といった否定的な発言を繰り返します。
→ 感情優先で議論が噛み合わないことが多い。
● 理屈攻め型
管理規約や法令、ネットの情報を持ち出し、延々と質問や異議を述べるタイプ。議事の進行が止まってしまうことも。
→ 正論に見えるが、目的が“議論”ではなく“対立”。
● 感情的介入型
個人的な体験や感情に基づいて話すことが多く、議案の趣旨から逸れがち。自分の主張が通らないと声を荒らげるケースも。
→ 議論の論点を整理することが困難。
● 沈黙の爆発型
普段は発言が少ないが、ある議題で急に強く主張し感情的になるタイプ。予測が難しいのが特徴です。
→ 対策が難しく、理事会にとってストレス源。
事前準備で“9割”が決まる
当日の混乱は、実は準備不足が原因であることがほとんどです。
トラブルを未然に防ぐために、以下のような備えが効果的です。
■ 議案説明資料はわかりやすく
・専門用語はできるだけ避け、図や表を使って視覚的に説明
・「結論→理由→背景」の順でまとめると理解されやすい
■ 想定質問と回答を準備
・過去の総会で問題になった議題は、反対意見を想定して回答例を用意
・理事会内で情報共有しておくことが重要
■ 議長・理事の役割分担
・進行役とフォロー役を明確に分けておく
・一人が対応しすぎると感情的になりやすいため、冷静なやりとりが可能な体制に
■ 専門家の立ち会いも選択肢
・トラブルが予測される場合は、マンション管理士や専門業者の同席を検討
・「専門家がいる」という抑止効果が期待できる
当日の対応:冷静さと毅然さを忘れずに
当日、どんなに挑発的な態度を取られても、感情的に応じては逆効果です。
以下のルールと姿勢を徹底しましょう。
■ 発言ルールを明確に
・「発言は1人1回まで」「1人○分まで」など、事前に案内しておく
・ルール違反があれば、議長が公平に制止
■ 議長権限で進行を維持
・「議事進行の妨げとなるため、発言は一旦ご遠慮ください」と冷静に対応
・規約や標準管理規約に則った進行で、正当性を持たせる
■ 議事録は事実のみ
・「声を荒らげた」「怒鳴った」などの表現は記載せず、中立的な記録に徹する
・余計な感情記録は、新たな火種になることも
総会後の“じわじわクレーム”にも注意
総会後も個別に管理会社へ連絡したり、理事長に執拗な質問を投げかける方がいます。
以下のように対応体制を整えておきましょう。
■ 理事長一人で抱え込まない
・対応は2名以上で行い、内容を記録する
・電話対応時は「折返しこちらからご連絡いたします」とクッションを入れる
■ 記録を蓄積する
・繰り返しトラブルがある居住者は、記録を残して将来の判断材料とする
・法的措置が必要なケースでは、記録の有無がカギになる
■ 専門家との連携を継続的に
・トラブルが慢性化している場合は、管理士や弁護士による定期的なフォロー体制を整えると安心です
まとめ:難しい居住者こそ“仕組み”で対応する
難しい居住者対応は「理事長の人格」「管理会社の対応力」だけに頼るものではありません。
冷静で公平な対応のためには、管理組合としての“仕組み化”が何よりも重要です。
トラブルの多い住民がいるから運営できない……ではなく、「トラブルを防ぐ運営ルール」を組み立てていくことこそが、真の管理運営力ではないでしょうか。
難しい居住者への対応は避けて通れません。だからこそ、戦略的に備えましょう。
以上です。何か相談事がありましたらエースマンション管理士事務所へお気軽にお問合せください。