今回はマンション建替え法の改正についてお話ししていきます。
2026年4月、老朽化マンションの再生・建て替えを後押しするため、区分所有法などの関係法令が大きく改正されます。
これにより、長年“動かない”とされてきたマンションの再生に道筋が見えてきました。
本記事では、特に管理組合が押さえておくべきポイントに絞って、今回の法改正をわかりやすく解説します。
1.なぜ法改正が必要だったのか?
築40年を超えるマンションは全国で137万戸以上。2033年にはその数が約2倍になるとも言われています。しかし現実には、以下のような理由で再生が進まず、空室化・スラム化のリスクが高まっていました。
①所有者の所在が不明で総会の定足数が満たせない
②建て替えの合意形成に時間がかかりすぎる(5分の4の賛成が必要)
③借家人の立ち退きや土地権利関係が複雑
※こうした課題を解消するための改正が、ついに動き出したのです。
2.改正のポイント【管理組合が注目すべき5点】
① 所在不明の区分所有者を「分母」から外せる!
所在不明者がいても裁判所の認定を得れば、議決の「分母」から除外可能になります。これにより、建て替えなどの重要決議の成立が現実的になります。
例)総戸数50戸、うち10戸が所在不明 → 従来:5/4×50=40戸の賛成が必要 → 改正後:40戸中30戸で可決可能に
② 建て替え・敷地売却の決議要件が緩和
これまで5分の4以上の賛成が必要だった建て替え決議。耐震性に問題がある建物などは、4分の3の賛成で可能になります。災害等で居住不能なマンションは、3分の2で決議可能となります。
③ 賃借人との調整制度が整備される
再生時に問題となりやすい賃借人との交渉についても、立ち退き料や調整手続きが制度化され、トラブルを最小限に抑えることができます。
④ 再生メニューが拡大。敷地売却や一括リノベーションも選択肢に!
建て替えだけでなく、建物を解体して土地を第三者に売却外壁や設備を大規模に更新する「一括改修型再生」など、多様な選択肢が制度として明確化されます。
⑤ 行政や支援法人が本格的に関与できるように
管理不全マンションに対して、自治体やNPOなどの「支援法人」が管理組合に助言・支援できるようになります。 また、悪化した管理状態に対して行政が是正勧告を出すことも可能になります。
3.改正法の施行スケジュール
法律 施行予定
区分所有法の改正 2026年4月1日
マンション管理適正化法などの関連法 2025年末までに順次
4.管理組合として今からできる準備とは?
法改正はチャンスです。ただし、法が変わっても動き出さなければ意味がありません。以下の準備を進めておくことで、将来の「再生」に向けた第一歩となります。
✅ 所有者名簿の整備と連絡先の確認
所在不明者を出さないように、定期的な名簿確認と連絡先の更新を徹底しましょう。
✅ 管理規約の見直し
法改正に合わせて、再生や敷地売却に対応できる規約条文を整備しておくとスムーズです。
✅ 専門家(マンション管理士・弁護士)への相談
建て替えや敷地売却には高度な判断が求められます。専門家の伴走支援を得ておくと安心です。
5.まとめ
今回の法改正は、長年停滞していたマンション再生の“ハードル”を下げるものです。管理組合にとっても、再生や建て替えに向けた具体的な検討を始める絶好の機会です。
更に詳しい情報が知りたい方はエースマンション管理士事務所までお気軽にお問合せください。