はじめに
マンションの給水管・排水管更新工事では、「共用部分だけでは不十分」という場面が少なくありません。
多くのマンションで配管は共用部分と専有部分が一体構造となっており、共用部分だけを更新しても、将来的な漏水リスクが残ってしまいます。
しかし、いざ専有部分配管も含めて工事を行おうとすると、
- 「専有部分なのに管理組合が関与していいのか」
- 「費用負担は誰がするのか」
- 「やりたくない住戸が出たらどうするのか」
といった疑問や反対意見が出やすく、計画が止まってしまうケースも多く見られます。
この記事では、共用部分配管と専有部分配管を一体で工事する際の、管理組合としての正しい手順を、
規約・専有部分工事・合意形成の観点から、実務目線で整理します。
1. なぜ配管工事では「専有部分」が問題になりやすいのか
給水管・排水管は、住戸内(専有部分)から立管・横主管(共用部分)へと連続しています。
そのため、共用部分だけ更新しても、専有部分の老朽化配管が残れば事故は防げません。
実際には、
- 共用部更新後に専有部で漏水が発生
- 原因切り分けが難しく、管理組合と区分所有者でもめる
- 「なぜ一体でやらなかったのか」と後悔する
といった事例が後を絶ちません。
2. 専有部分配管工事の原則と、管理組合が関与できる理由
専有部分工事の原則
- 専有部分は区分所有者の管理責任
- 工事費用も原則は各区分所有者負担
これは管理規約・区分所有法上の基本です。
それでも一体工事を検討すべき理由
- 工事品質を全戸で統一できる
- 工期・騒音・臭気を最小限にできる
- 未実施住戸による将来リスクを減らせる
- 漏水時の責任関係を明確にできる
管理組合が「主導」することと、「費用を負担すること」は別であり、合理性があれば、管理組合が工事計画・調整に関与することは可能です。
3. まず確認すべき管理規約・細則
一体工事を検討する際、最初にやるべきことは規約確認です。
必ず確認したいポイント
- 専有部分の範囲(配管はどこまでか)
- 「共用部分に準ずる設備」の定義
- 修繕積立金の使途制限
- 過去の配管工事に関する総会決議
よくある落とし穴
- 規約に配管の扱いが明記されていない
- 専有部分工事への関与ルールが存在しない
- 費用負担の整理が後回しになっている
👉 規約を確認せずに説明会を始めると、ほぼ確実に揉めます。
4. 管理組合が踏むべき実務手順【5ステップ】
STEP1|現況調査とリスク整理
- 共用・専有を含めた配管劣化状況の把握
- 更新しない場合のリスクを明文化
STEP2|工事パターンの整理
- 共用部分のみ更新
- 希望者のみ専有部工事
- 全戸一斉の一体工事
それぞれのメリット・デメリットを整理します。
STEP3|費用負担案の作成
- 共用部分:修繕積立金
- 専有部分:区分所有者負担
- 管理組合が一時立替する方式の検討
STEP4|総会決議と合意形成
- 決議事項を明確化
- 普通決議か特別決議かの整理
- 未協力住戸への対応方針を事前に決定
STEP5|同意書取得と工事実施
- 専有部分工事に関する同意書の取得
- 工事範囲・内装復旧範囲の明確化
5. 専有部分工事で実際に起きやすいトラブル
- 「うちは工事しない」と拒否される
- 内装復旧の範囲でもめる
- 費用説明が不十分で不信感が生じる
- 管理組合が責任を問われる
これらの多くは、事前説明とルール整理不足が原因です。
6. 規約改正・細則整備が必要になるケース
以下の場合は、規約改正や細則整備を検討すべきです。
- 将来も一体工事を原則としたい
- 専有部分配管を「共用部分に準ずる設備」と整理したい
- 費用負担ルールを明確化したい
※規約改正は慎重に行う必要があり、専門家関与が望まれます。
まとめ|専有部分配管を含む工事は「段取り」が9割
専有部分配管を含む工事は、
- 技術
- 法律
- 規約
- 合意形成
が複雑に絡みます。
早期の整理と正しい手順が、将来のトラブルを防ぎ、
マンションの資産価値を守ることにつながります。
以上です。更に詳しい情報が知りたい方はエースマンション管理士事務所へお気軽にお問い合わせください。

