1. はじめに ― なぜ今、規約改正が重要なのか
2025年、マンション管理を取り巻く制度が大きく動きました。2025年5月に成立した「区分所有法改正」と、それを踏まえた 2025年10月17日の標準管理規約(国交省)改正です。これらの制度改正は、単なるルールの微調整ではありません。
- 築40年超のマンションが増加
- 修繕積立金不足の加速
- 理事の担い手不足
- 総会出席率の低下
- 所在不明・連絡不能の所有者問題の増大
といった“マンションの構造的課題”に向き合うため、
「意思決定を円滑にし、必要な管理を止めない」ための改革
が一気に進んだものです。
管理組合にとっては、放置すると管理不全化が進む一方で、早めに動けば資産価値を守れる重要なタイミングと言えます。
本記事では、管理組合が押さえるべき改正ポイントと、実務で必要となる対応を整理します。
2. 改正の背景 ― 2つの“老い”が進むマンション
今回の大幅な制度改正を後押ししたのは、マンションの「双子の老い」です。
① 建物の高経年化
全国の築40年以上のマンションは120万戸を超え、
給排水管、エレベーター、外壁、機械式駐車場など“更新が必要な時期”が重なりつつあります。
修繕積立金不足を抱える組合も多く、管理不全のリスクは年々増大しています。
② 住民・担い手の高齢化
理事会の担い手がいない、総会の出席率が極端に低い、委任状を集めても成立しない…。管理組合運営そのものが困難になるケースが増えています。
今回の改正は、この 「意思決定ができない状態」 を改善する狙いが強くあります。
3. 改正スケジュールと適用タイミング
制度改正は段階的に実施されます。
- 2025年5月:区分所有法改正(成立)
- 2025年10月17日:標準管理規約(国交省)改正案が公表
- 2026年4月:区分所有法改正の施行予定
管理組合としては、
- 2025年度総会〜2026年度総会のいずれかで管理規約改定を行うのが現実的
- 総会招集時期・臨時総会の可能性も視野に入れる必要あり
というスケジュール感です。
4. 管理組合が押さえるべき“主要な改正ポイント”
ここからは、標準管理規約改正を中心に、管理組合が具体的に対応すべき項目を詳しく整理します。
◆ ① 総会・決議要件の見直し ― 「出席者多数決」へ
最もインパクトが大きいのが、総会の決議母数の見直しです。
これまでは、
- 「総区分所有者の4分の3」
- 「議決権総数の4分の3」
といった“全員を母数とする決議”が求められ、出席率低下時には決議不能となる事例が多発していました。
改正後は、
総会に出席した区分所有者(+委任状・代理人を含む)を母数とした多数決が可能となる方向で運用が整理されました。
また、次のような仕組みも同時に明文化されました。
- 所在不明所有者は、裁判所の手続きを経て母数から除外できる
- 決議不能状態を長期化させないための制度整備
これは、出席率が30〜40%程度でも決議可能となるため、
多くの管理組合にとって合意形成の強力な追い風になります。
◆ ② 所在不明・連絡不能の所有者への対応
所在が分からない、連絡がつかない、登記が古く所有者が特定できない…。
このような専有部分の扱いが大きく改善されます。
- 「所在等不明専有部分管理制度」
- 「管理不全専有部分管理制度」
により、裁判所が管理人を選任し、
修繕工事・立入り・費用の徴収を可能とする手続きが整いました。
→ 理事会で必ず行うべきこと
- 所在不明リストの整理
- 海外在住所有者の把握
- 管理会社への情報共有
- 必要に応じ弁護士に相談
◆ ③ 再生・建替え以外の選択肢が拡大
改正では、老朽化住宅の将来の選択肢が増えます。
【従来】
- 建替え(4/5以上)
- 敷地売却
改正後は、
- 一棟リノベーション
- 建物取壊し後の敷地売却
- 外部不適格部分の改善方針
- 一部除却など柔軟な再生手法
が明確化されました。
さらに、災害リスク・老朽化による安全性不足が認められた場合は決議要件が緩和される 仕組みも整備されています。
築30年以上のマンションは、“修繕”だけでなく“再生の選択肢”を検討する時代に入りました。
◆ ④ 国内管理人制度 ― 海外所有者への対応強化
海外在住の所有者が増え、連絡が取れないケースも増加しています。
今回の改正で 「国内管理人」制度 が導入され、海外所有者に対し、
- 国内在住者を管理人として選任
- 管理組合の通知をその管理人へ送付
- 権利行使も管理人経由で実施
という仕組みが整備されました。
理事会としては、
規約に「海外所有者は国内管理人を選任すること」を明記するかどうか、早期に検討すべきです。
◆ ⑤ 理事・役員就任時の本人確認の明文化
理事のなりすまし問題、外部者が委員に紛れ込むリスクが指摘されていたことを受け、
理事・専門委員就任時には、本人確認を適切に行うことが望ましい
という指針が明記されました。
実務としては、
- 顔写真付き身分証
- 印鑑証明
- 住民票などの確認ルールを整備する必要があります。
◆ ⑥ 議案の要領・説明義務の強化
今回の改正で、
- 総会の議案には「要領(賛否検討に足る内容)」を記載する
- 給水管等の更新工事は原則「普通決議」で足りる
など、実務負担を軽くする(=意思決定しやすい)仕組みが追加されています。
→ 住民に「分かりやすい説明」を行う時代へ
総会資料の改善は、管理会社任せにせず、
理事会の役割として強く問われるようになります。
5. 管理組合の「実務チェックリスト」
- □現行規約が2025年改正標準管理規約と整合しているか
- □ 総会議案に「議案要領」「目的」「背景説明」が入っているか
- □ 出席率を上げる仕組みを検討しているか(事前説明会・委任状促進)
- □ 所在不明・海外所有者リストを作成しているか
- □ 国内管理人制度を規約に盛り込むか検討したか
- □ 修繕だけでなく「再生の選択肢」も説明できる状態か
- □ 理事・委員の本人確認ルールを整備しているか
- □ 2025〜2026年度の“規約改定スケジュール”を検討したか
6. まとめ ― 改正を「負担」ではなく「未来の投資」として
今回の制度改正は、
「管理組合が決められない」という状態を放置しないための大改革 です。
裏を返せば、
改正に合わせて規約を見直し、住民に丁寧に説明できる管理組合は、
資産価値を維持しやすい時代になったとも言えます。
2025〜2026年は、規約改定の絶好のタイミング。
理事会・管理会社が協力し、
- 住民説明
- 規約案作成
- 総会運営の改善
を進めることで、マンションの未来の選択肢を広げられます。
以上です。更に詳しい情報が知りたい方はエースマンション管理士事務所へお気軽にご相談ください。


