マンション管理組合の多くは、理事の任期を「1年」としているケースが一般的です。輪番制により負担が偏らず、全戸が公平に役割を担うという点では優れた制度ですが、一方で「継続性が失われやすい」という根本課題を抱えています。

本記事では、理事が毎年交代することで発生しがちな問題と、その対策を専門家視点から解説します。


◆問題①:長期的な課題が進まない

理事が毎年入れ替わると、複数年度にわたる重要案件の進捗が止まりやすくなります。
例えば次のようなテーマが典型例です。

  • 大規模修繕工事の検討
  • 管理規約の改定
  • 駐車場運営の見直し
  • 設備更新計画(EV更新・給水ポンプ交換など)

これらは「1年で結論が出ない」場合があります。
しかし毎年の理事会でメンバーが変わると、前年の方針が白紙に戻ることがあります。

「去年検討していた理由がわからないので仕切り直しましょう」

このひと言で、検討期間が1年延びることも珍しくありません。


▼対策:

①「短期課題」と「中長期課題」を分離して管理する

例)
短期:夏の消防点検対応 / 防災用品購入
中長期:修繕積立金改定 / 大規模修繕設計準備

②理事会資料に年次を跨ぐ案件を明記する

  • 「継続審議案件」として議事録上にラベル化する
  • 毎回進捗報告を行う

③年度初回に「前年度の振り返り会」を開催

管理会社任せにせず、理事長引継ぎ会として実施する形が有効です。


◆問題②:決定事項の根拠が失われる

毎年理事が変わるマンションで最も多いトラブルがこちらです。

  • なぜ修繕積立金を改定しなかったのか?
  • なぜ複数見積の中でその業者を採用したのか?
  • なぜ駐車場の料金改定を延期したのか?

理由が伝わっていないまま新理事が判断し直し、再議論になることがあります。

その結果、

  • 居住者への不信感
  • 管理会社説明のやり直し
  • 業者変更トラブル

などが発生するケースもあります。


▼対策:

①決定事項は「背景」「選択肢」「理由」をセットで残す

例)
【決定】→ 駐車場値上げを1年延期
【背景】→ 空き区画減少により利用希望者が増加
【選択肢】→ ①4月改定、②翌年度改定
【理由】→ 年度途中の改定は混乱が予想されたため

→ここまで残すと再議論が起きにくい

②議事録の一覧表(履歴台帳)を作成

理事会別に探す形式だと埋もれやすいため、

  • 年月
  • 議題
  • 決議内容
  • 次回対応者

が一覧化された表が最適です。


◆問題③:担当者任せになり運営が属人化する

1年交代制は役割がリセットされるため、「得意な人が担当してしまう」「前年度担当者がいないから分からない」という状態になりがちです。

起きやすい状況としては:

  • 理事長の力量で管理レベルが変わる
  • 会計担当者に負荷が集中
  • 役員経験者がいない年度に停滞

などが代表例です。

特に、

「前任者が詳しかったのに今年は誰もわからない」

という状況はよくあります。


▼対策:

①役割ごとの業務マニュアル化

最低限、次の項目は残すことが理想です。

  • 管理費・修繕積立金の承認プロセス
  • 理事会開催フロー
  • 緊急時の連絡系統
  • チェックすべき管理会社資料

②年間スケジュールの固定化

例)
4月:役員選任/引継ぎ会
6月:総会議案検討
8月:中間点検
11月:来年度予算案検討 など

③理事長経験者が相談役として残る制度

※最も効果が高い仕組みです

輪番制を維持しつつ経験値の継続が可能です。


◆問題④:管理会社依存が深まり判断能力が低下する

理事が入れ替わると、管理会社担当者のみがマンションの継続課題を把握している状態になりがちです。

その結果、

  • 管理会社の提案内容を十分に比較できない
  • 費用の妥当性が判断しづらい
  • 提案が「そのまま採用」されるケースが増える

といった現象が起こります。

ある管理会社担当者の言葉で言い換えると、

「新理事の方は今年の計画を理解していただくまでに3ヶ月かかる」

という現実があります。

つまり、1年間のうち 最初の3ヶ月は説明期間となり、実質的な意思決定期間が短くなります。


▼対策:

①管理会社提案は比較表形式で保管

例)
項目/金額/工法/メリット/デメリット/管理組合側判断

②理事会資料をクラウド化

推奨ツール

  • Googleドライブ
  • Dropbox
  • OneDrive
  • 団地によっては理事専用ポータルサイトも可

③必要に応じて外部専門家を併用

例)

  • 長期修繕計画見直し
  • 管理規約全面改定
  • 大規模修繕に伴う設計監理

管理会社とは独立した見解を得られ、判断の補強となります。


◆まとめ:輪番制を続けるなら「仕組み化」が必須

理事が毎年交代すること自体は悪ではなく、次のメリットがあります。

  • 負担が特定者に集中しない
  • 居住者参加意識が高まる
  • 透明性を維持できる

しかし、継続性を保つ仕組みがなければ問題は必ず発生します。

以上です。更に詳しい情報が知りたい方はエースマンション管理士事務所へお気軽にご相談ください。

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